美容業界で活躍されるビューティエディターさんやビューティライターさん、美容家さんなどをお招きして、彼女たちの美しさの秘密に迫る連載がスタートします。

三回目のゲストは、数々の著名人から指名を集めるヘアメイクアップアーティストのAKANEさん。

ふんわり優しい雰囲気を纏いながらも、確固たる意志で肌づくり&メイクを行う凛々しい姿にファンが多数。

著名人だけでなく一般の方のメイクも担当することも多いのですが、担当する相手の“最も美しいパーツ”を見つけ、そこを強調して美しく仕上げるテクニックはほかに類を見ないほど。今回は前後編に渡って、AKANEさんが考える『肌づくり』に対する考え方やお仕事への哲学、さらには肌づくりのテクニックについてもお伺いします。

今回お話をお伺いしたのは……

AKANE

あかね

ヘアメイクアップアーティスト。専門学校を経て、インターンシップにも参加。その後数年のヘアサロン勤務でヘアの実力を高めたのちに、ヘアメイクアップアーティストの中野明海さんに師事。独立後は、政界から歌舞伎界、アスリートや俳優、女優まで幅広い方々からの指名を一手に受けるトップアーティストに。彼女の仕事はインスタグラムでチェック可能。https://www.instagram.com/akane96hair_makeup/

インタビュアー

まえだ・みほ

国際基督教大学を卒業後、大手広告会社に入社。退社後、ビューティライターとして活動を開始。最新の美容事情や化粧品の製品情報に精通しながら、ファッションや演劇、ゲーム、マンガになど幅広い視点からビューティを分析するのが得意。各媒体で美容記事を執筆するほか、著名人へのインタビューも多数。

美容に関することが大好きな幼少期を過ごし、
自然な流れを経て、メイクアップアーティストに。

前田美保
AKANEさんには何度もメイク企画に出ていただいたり、あとは私のメイクを担当していただいたりと、お付き合いは本当に長いのですが、なかなかプロフィールに深く迫ったことがなかったですね。そのあたりからお聞かせください。

AKANE
進学高校に通ったにもかかわらず、どうしてもヘアメイクアップアーティストになりたくて、高校卒業と同時に上京してきたんです。
専門学校に入り、インターンシップにも参加して、そこから4~5年はヘアサロンで修行を重ねました。
当時、ヘアメイクアップアーティストの中野明海さんが大好きで、アシスタントに応募したら見事採用されて!(笑)
そこからしばらくアシスタントを務めさせていただいてから、独立しました。

前田
どうしてヘアメイクアップアーティストになろうと?

AKANE
大人になるにつれて「私は事務仕事には向かない!」と悟ったんです(笑)。
昔からお人形にメイクしたり髪をまとめたりと、美容に関することが好きだったので、自然な流れだったんでしょうね。
そんなに大好きだったのに、中学生でアトピー性皮膚炎になり、思春期のニキビができたりして、表に出られないくらいの肌状態になったんです。
そこからさらに化粧品フェチに拍車がかかり、化粧品カウンターを回って、気になるアイテムを根こそぎ試してみるようになりましたね。
そんな時代を経て、私が大人になる頃には初めて人気雑誌で『ヘアメイクアップアーティスト』が特集されたりと、まさに時代もこの職業に注目し始めたタイミングで。

前田
美容師としてサロンワークも体験したうえで、その先にあるヘアメイクアップアーティストを目指したという感じなのですね。
当時はまだまだニッチな職業だったのは事実ですから、AKANEさんは相当先見の明があったということ。
私も小さいときからお人形の髪いじりが大好きで、「大人になったら美容師になる!」と宣言していましたが(笑)、結局は普通に大学に行き、会社に就職して、書く側の人間になっちゃいましたから。

AKANE
小さいときから映画が好きだったんですけど、ストーリー以外のところがとても気になって、例えば「オードリー・ヘップバーンの夜会巻きはどうなっているんだろう」とかディテールばかり追っかけてしまっていました(笑)。
あとは“肌の美しさ”にも惹かれるタイプなのですが、私の出身の仙台は本当に肌がキレイな女性が多くて。街を歩くたびに女性の肌をずーっと観察していましたね。

前田
栴檀は双葉より芳し! なるほどー!
小さい頃からの積み重ねが、今や数多くの女優さんや俳優さん、タレントさんから指名を受けるAKANEさんの秘密なんですね!

現場の空気を読む、肌を触るだけで感情が分かる――。
AKANEさんが多くの著名人から指名を集める理由は、そこ。

前田
ヘアメイクとしてのお仕事がもう長いと思いますが、お仕事として大変だと思うことはありますか? 私は現場を見ているから「大変そうだな……」と思うことが多々あるんですが(笑)。
女優さんやタレントさんも色んな方がいらっしゃるし、例えば美容の企画でも“編集者が望むこと”が必ずしもAKANEさんが考えることと100%合致するわけではないと思いますし……。
そのあたりはどうですか?

AKANE
私は28歳から15年間ヘアメイクをしているんです。すると、やはり俳優さん、女優さんご本人のやりたい方向性があって、雑誌にも望む方向性があって、というコンフリクトはもちろん出てきますよね。
そんなシチュエーションでは被写体になる方ご本人としっかり会話をして、ご本人の気持ちを“キャッチ”できるようにします。
そうしつつも、カメラの前に立ったときに気分がのらないのは可哀想なので、最初はご本人の意思に沿うようにヘアやメイクをつくり、そこから少しずつアレンジをしながら、雑誌が望む方向性に寄せる……という感じで進めますね。
“現場の空気”を読む、という言い方がベストか分かりませんが、だんだんと読めるようにはなってきます(笑)。
あとは、その方の肌を触ると感情が分かるんです。

前田
なるほど! すごい!

AKANE
女性は特にホルモンバランスもあるので、「今日は肌が冷たいな」などでも体調が分かったり、あとは少しの表情の変化、例えば、嫌なことをされると本当に微表情なんですけど顔が曇ったり。それを見逃さないようにしています。
被写体ご本人の体調を鑑みつつ、彼/彼女の美意識、それから雑誌の担当者の美意識、カメラマンやスタイリストなど撮影に関わるスタッフ全員の美意識……。それらすべてに気を配るという感じです。

前田
AKANEさんはいわゆるテレビや舞台の俳優さんを含め、歌舞伎俳優さんやアスリートの方など、男性を担当されることも多いですよね。
女性との違いはありますか?

AKANE
やっぱりどう見せたいのか、どんなシチュエーションの仕上がりを狙っているか、というカメラマンの狙いもありますし、それは被写体が女性であろうが男性であろうが同じですよね。
男性のタレントさんを担当していると「どこをメイクするの?」と聞かれることがあるんですけど、例えば、“シャープな印象”みたいなものは影をつけると演出できるんです。キリッと撮影したい場合は影を強める場合がありますね。
あとは“汗”のコントロール。汗は男女問わず誰でもかくでしょう? でもこの汗の回避は下地を塗ってパウダーをかけるだけでかなりクリアできるんです。肌にパウダーをかけることは、いわゆる“洋服を着せる”みたいな感覚に近いんですよね。だから、男性のタレントさんにももちろんベースメイクをします。
ベースにマットなアイテムを使用して、その上からパウダーを薄くかけても、なるべく素肌っぽく見えるようには工夫はしていますけどね。

前田
やっぱりヘアメイクさんの技術って本当に奥が深い……!

AKANE
同じ方をヘアメイクしても、メイクアップアーティストの個性って出るんですよ。それって料理とまったく同じで、同じ素材を料理してもそれぞれのシェフや料理家さんによって出来上がるものが違うので。

前田
確かに! AKANEさんを指名した時点でAKANEさん風に仕上がるわけですし、それを見越して指名するわけですものね。

AKANE
そうなんでしょうね。でも、ヘアメイクの中で何に一番重きを置いているか、というとやはり肌づくり、なんだと思います。男性に対しても女性に対してもそうです。

前田
ちなみに、女性を担当されるとき、肌づくりにおいて気を付けているポイントは何ですか?

AKANE
男性の場合はテカらせないことが重要ですが、女性の場合は“保湿”。テカってもいいくらいの保湿感が大事なので、まずはスキンケアをたっぷり行います。
あとは男性と女性では使う下地が違うんです。男性の場合は毛穴をフラットにして、テカりを抑える方向の下地を使いますが、女性は逆にしっとりテカってするくらいの保湿メインの下地にします。女性はそれくらいのほうが肌感として魅力的に仕上がるんですよね。
スキンケアも男性と女性では使うものが違いますね、そういえば。かつてすごく気に入ったスキンケアがあったので、とある男性タレントさんにそれを使ったら「ちょっとテカるね」と言われたことがあったので、やはりスキンケアから調整しないといけないなと改めて思いましたから。最初は同じモノを使っていたんですけどね。

一般の方に伝えたいこと。それは自分の肌の触り方。
テクニックひとつで、肌印象も美人度も大きく変わる。

前田
このインタビューに入る前、AKANEさんと雑談をしていたら、私が会報誌に書いた記事にとっても納得したとおっしゃってくださって。最近の肌トレンドは“クリーンな肌”だと書いたコラムですよね?

AKANE
どうしても「シミが……」とおっしゃる方にはきちんと隠すようにしていますけど、でも必要以上には重ねないようにしていますね。できるだけ、少しスッキリ見えるような肌につくろうと。まさに前田さんがおっしゃった“クリーン”な肌づくりです。もちろんゼロにはしないんですけどね。

前田
そういう肌づくりがやはり今っぽいと思います。粉体とかも進化しているので、どのファンデーションを使っても厚塗り感は出ないと思うんです。
昔のファンデーションに比べると、本当に雲泥の差。ただ、“使い方”という面では問題があると思っていて(笑)。

AKANE
(笑)。同感です。

前田
私が思うのだからAKANEさんはきっと思いますよね(笑)。
高校や大学の同級生とゴハンを食べに行ったりする機会があるのですが、そうすると彼女たちの肌づくりが、何十年も前のテクニックでストップしているんです……。会った瞬間に「どうしてこんなファンデーションの塗り方しているんだろう……」と思っちゃうんです。
もしかしたらモノ選びを間違っている可能性もあるでしょうけど、やっぱり全体を同じように均一に塗るのは、今はアウトだと思うんですよね、私。
フェイスラインギリギリまで同じように塗ってしまうと、そこが全部“顔”になってしまうから、大顔に見えちゃう。若い人たちはそのあたりのテクニックをよくわきまえていて、とても上手なんですが、私たち40代オーバーはこの罠に陥りやすいですよね。友人たちを見ていてもどこから直してあげればいいのか分からなくて、つい何も言わずに帰ってきちゃうんですが……(笑)。
昔のままのテクニックでメイクしているんですよね。

AKANE
ちょうどある雑誌で料理研究家の方のメイクをさせていただいたんですが、普段のメイクで現場入りされたのを見て、「あ、このままじゃダメだな」と思っちゃいました。
とても美人さんだったのですが、かなりの厚塗りで、その美人度を台無しにしてしまっている感じがあって……。
モデルさんたちは素顔で現場にいらっしゃいますが、一般の方はメイクしてスタジオに入られることがほとんどですから、そのときに普段メイクをチェックするんです。
ちょっと肝斑が多い方だったので、そこだけカバー力の高いファンデーションを重ね塗りしたんですが、実はフタを開けてみたら、彼女が普段使っているファンデと私が重ね塗りしたファンデがまったく同じモノだったんですね。
ということは、やっぱり塗り方次第でまったく印象が変わる、というわけなんです。

前田
おおお! なるほど。彼女に塗り方とか聞いてみましたか?

AKANE
はい。圧倒的に“圧”が違いました。
私たちプロのヘアメイクは羽根のような軽さで塗るんです。ものすごくグッと手に力を入れて塗るんですよね。親のカタキみたいに(笑)
塗る必要はまったくなくて、もっとふわっと軽く塗っていいんです。
自分の肌に対して、扱いが雑で粗い!(笑)

前田
もうね。それはしょうがない(笑)。
私たちは色んなチャンスでプロのヘアメイクさんにメイクをしてもらうことがありますが、一般の方はなかなかそんな機会がないですもん。
誰かに触ってもらうと、「こんなに丁寧に扱うんだ!」と目ウロコで驚きますよね。

AKANE
眉間にシワを寄せながらメイクしている人もいるし……(笑)。
そうすると、その“心持ち”がそのままメイクに出るんですよ。
「高ければいいんでしょ?」とか「いいアイテムを使えばメイクが上手くできるでしょ?」というのはまったく違っていて、それよりも肌を優しく扱う、いい気持ちでメイクをするといった“心持ち”がとても重要なんだと思います。

前田
メイクをしている顔はほかの人に見せるわけではないものだからこそ、余計に気を付けてメイクしないとダメですね。

AKANE
心が本当に落ち着いていらっしゃる方は、本当に美しいなぁ、と思います。造形の問題ではないんですよね、不思議なことに。
「気持ちいい!」と感じながらお手入れして、肌をつくってメイクをして……。肌もクリーンなことがトレンドですが、心持ちもクリーンであることが大切だと思います。

前田
何だかいいお話! 後編では実際のテクニックも見せていただきたいと思います!

(後編に続く)